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「眼が潰つぶれちまふ――ねえ、先生」
「誰かと思つたら――」
まだぎこちなく坐つて伏目に固くなつている堂本の様子から、自分が誰かといふことは判つてはいるのだなと思つた房一は、
が、材木置場の混乱にもかゝはらず、そこから一段と小高くなつている出張所の構内では、やはり高張提灯がかゝげられ、焚火が燃え、人が立つて歩いていたが、をかしい位にひつそりし、柵のところにかたまつた人影は下方の混乱を黙つて見物しているとしか見えなかつた。
「さうよ。てめえはその大将だらう」
房一のまはりには三人の男が立ちかこんで、黙つて治療の様子を見まもつていた。背中をむき出しにして横向きに寝た男は、傷を洗はれるときに呻うめいた。血の気の引いたその顔にはどす黒い蒼白さが現れた。
「おーい。渡つてもいゝかね」
「ふむ、もうよろしい、よろしい」
房一は苦笑した。
「はあ、なるほど」
房一は急いで膿盆をひきよせた。
と云ふ疳高かんだかい大きな声があたりに響きわたつて房一を面喰せた。
「さうですよ、ですが、何年ぶりでせう。これがもつと他の所だつたらおたがひ気がつかなかつたかもしれませんよ」